最近観た映画

Tuduki2005-12-09

公私共々ばたばたしていたもので、10~11月は映画を1本も観ていなかった。レンタルデオすら『フレンズ』の最終シーズンのみとは……ようやく映画を観る時間ができたので、試写や劇場で何本か観た感想を簡潔に。


ナイト・オブ・ザ・スカイ
『TAXi』のジュラール・ピレス監督の最新作。いわばフランス版『トップ・ガン』。
……と書くといまさら感アリアリだが、じつはとても楽しかった。なにしろ映像がスゴイ。フランス空軍全面協力のもと、現役の空軍機を実際に使用して撮影されたという映像はものすごい迫力。多少の効果程度にCGも使用したそうだが、本物を本当に飛ばして撮影したジェット戦闘機の姿には、異様な説得力……後光が射してるぞ! まあ『トップ・ガン』だって本物の戦闘機の映像だったけれど、こんなに“寄り”では撮影してないもんなぁ……カメラを戦闘機にくくり付けて撮った映像だそうだ。それに『トップ・ガン』が飛んでたのは広大無辺なアメリカのド田舎だったり海上だったりで画ヅラが単調だったけれど、こっちはアルプス山脈やら湖やら色とりどり……それどころか首都パリ上空すらも撮影のために戦闘機を編隊飛行させているのだ! けど、東京上空でこんなロケやられたらやっぱりイヤだなぁ……
ストーリーは屁みたいなモンだけれど、そのおかげでストーリーに邪魔されることなく映像に没頭できる。子どもも喜ぶ100分間の乗り物ビデオ。オトナが喜ぶ無意味にエロチックなサービスカットもあり(笑)。


シリアナ
トラフィック』脚本のスティーブン・ギャガンが監督。元CIAが書いたベストセラーが原案の暴露ネタ映画。ジョージ・クルーニー主演、マット・デイモン出演。
元ネタの本はノン・フィクションだけれど、映画はあくまでも本にインスパイアされたフィクション。この映画のように、アメリカ政府の悪行を批判する映画がちゃんと創られるようになってきて、ここ数年続いた、カルト教狂信者みたいなアメリカ社会のキモ悪さが薄れてきたのは、個人的に好ましい。でもこの映画は、根性が座ってない中途半端さがヤな感じ。いろいろなネタを擬似客観的に描くのはいいとしても、「これが真実かどうか、結論がどうなるかは観客に委ねます」なんて主張のないスタンスはどうなのよ。ノン・フィクションの原作をわざわざフィクションに変えた意味ないじゃん! ニュースじゃないんだから、批判する映画をつくるなら創り手としての主義主張をはっきり示すべきだし、それなりの覚悟をもつべきだ。これでは卑怯者じゃないか。……ということで批判精神は他の映画に期待。
試写状にはでっかく『世界は陰謀でできている。』と書いてあり、私はこれが邦題だとしばらく思い込んでいて、スケジュール帳にも『世界は〜』と書き込んでました…カッコイイじゃんとまで思った。ところが本当のタイトルは『シリアナ』。『尻穴』とか表記して喜ぶヒト達が大勢出そうです。


『Mr.&Mrs.スミス』
ブラピとアンジェリーナ・ジョリーの、ビッグ・スケールな夫婦喧嘩コメディ。
ポップコーン映画として楽しめました。夫婦ともスパイで殺人の達人で…という設定に説得力もたせる工夫がイマイチかなと思ったけれど(特に後半の、会話の中身ですごさを主張しあう演出はツマラナイ)、夫婦ゲンカの気持ちの機微なんかは逆にリアルで説得力あったりして(じつは○○だった…という些細な告白にイチバン激怒したりなど)、なんか妙な気分。ドンパチ大騒ぎしても民間人は死なないし、組織の人間も死んじゃう連中はみんな顔出しナシなので、命の尊さとか考えずにすむ、お気楽なコメディとして成立している。こういう配慮って監督やプロデューサーがするのかな? それとも映画会社のエグゼクティブがデータを基に、観客の気分を害する要素をスポイルしていくんだろうか?(後日注:こういう内容に“スポイル”を使うのは間違いだそうですね…知らずにずっと使ってました)
いずれレンタルビデオなんかで妻と一緒に鑑賞…なんてのは、私は御免こうむりたい。私は妻と対等に闘えないので。


ロード・オブ・ウォー
アンドリュー・ニコル監督&脚本。武器商人のニコラス・ケイジが暗躍。
架空の主人公による架空の物語の体裁をとっているけれど、各々のネタはほぼすべて、実在の武器商人にまつわる実話。この手のノン・フィクションなんかで見かける有名なネタも出てくるが、繋げ方がうまい。天性の武器商人として、笑えるほどの大活躍をみせるニコラス・ケイジ。でも、一言も具体的な台詞が出てこなくても、これはちゃんとした反戦映画だ。
この映画の創り手は根性が座っている。創り手の主張が主人公の台詞としてはっきり明言されているし、映画の最後に流れるテロップの強烈な皮肉にはぶっ飛んだ。『シリアナ』で残ったもやもやした思いがスーッと晴れた気分。『尻穴』と表記する人びとならこっちは『戦争王』とでも書くんだろうな。