別れのとき

Tuduki2007-07-04

庭の巣箱に営巣中のシジュウカラが、可愛くて可愛くて仕方ない。


巣穴の中で小さな声で鳴いていたヒナもだいぶ大きな声で鳴くようになった。中が暗くてよく見えないけれど5〜6羽いるらしい。そっと覗き込みながらチュンチュンと舌を鳴らしてみると、親鳥と間違えていっせいに大きく口を開けてさえずる。なんかもォ、ものすごく可愛くて可愛くて……胸キュン♪だ。親鳥がひっきりなしにエサを運んで飛び回る……親の役目を務めるってのは大変なもんだなシジュウカラの世界でも。



 
動きが速すぎて、なかなか写真に撮れないけれど
青虫毛虫やクモなんかをヒナに与えているみたいです。


あんまりカワイイもんだから、
「親鳥がエサをやりに巣に入ってるあいだに網をかけたら捕まえられるよね」と言ったら、
「絶対にやめてよね!……そんな可哀想なこと、やっちゃダメだからね!!!!」と、妻と子にキツく叱られた。


昨日の朝の写真。ヒナたちはもう相当に大きくなっている。先週までは親鳥が巣穴に入ってエサをあげてたのに、ヒナ自ら外へくちばしを突き出すようになっていた。こりゃマジであとほんの数日で巣立ってしまうなぁ…いよいよお別れかぁ…と寂しく思う。巣立つ前に1羽だけでもそっと取り出して鳥カゴで買おうかな…とも企んだけれど、和鳥(日本に定住する野鳥)を許可なく捕獲して飼育することは法律で禁止されている……ちぇっ。


……大きくなったヒナを狙っているのは私だけではないようで、我が家の近所の電線にカラスとヒヨドリが待機するようになった。巣立った瞬間の、よちよち飛びのときに襲うつもりで機会を狙っているんだろうか? ……ものすごく可哀想だけれど、それも自然の摂理ならば人間が妨害しちゃいけないんだろうなぁ。そんなふうに寂しく考えた。シジュウカラは5~10個の卵を年に2〜3回も孵化させるそうだから、確率からすればほとんどのヒナは生き残れず親鳥になれないというワケだ。それがまさに自然の摂理なのだ。


という具合に、弱肉強食感あふれる自然の摂理に感じ入っていたのだけれど……帰宅間際に妻からの緊急TEL。
「や…やられたぁッ!」


何事か!?と思って話を訊くと、
夜、庭でガサガサっと大きな音がしたので覗いたら、ネコが巣箱の上に乗って激しく揺らしていたんだそうだ。ネコのやつもヒナを狙っていたのか…くそ。慌てて庭に飛び出して追い払おうとしたら、ネコのやつはちょっと飛び退いただけで“邪魔すんなよオメェは…”という目で妻をニラんでいたそうだ。


ヒナの安否が心配で帰宅してすぐに巣箱を覗いてみたけれど、暗くてさっぱりわからない。とりあえず、閉店間際のショップに飛び込んで購入したネコよけの薬を撒いて、朝を待つことにしたのだけれど……





今朝みたら、巣箱は空っぽだった。
親鳥が葉っぱや犬の毛を一所懸命に敷き詰めてつくった巣のふわふわの一部までが穴から引き出されている……ネコのやつは、穴から手を突っ込んでヒナを1羽ずつ引きずり出して弄んだに違いない。もうちょっとで巣立つところだったのに…なんて可哀想に……。


昨日のこの写真が最後の姿になるとは……絶句



やむをえん……それもまた自然の摂理。
…なんて思ったのもつかの間、「あれ? ちょっと待てよ…オイオイ、飼い猫は自然の摂理には関係ねぇじゃねぇか!」と気がついた。私はもともとどういうわけか人懐こくて明るいイヌは大好きだが、身勝手で役立たずのネコは腹立たしいとみなす性分だったので、可愛くて可愛くて仕方ないシジュウカラのヒナが襲われて、怒り心頭&怒髪天だ。くっそォ…覚えてやがれよ。今度また来たら金属バットでぶん殴ってやる!

……と怒りに燃えていたのだけれど、ふと冷静になって、
そんな泥棒ネコ殺し屋ネコですら、きっと飼い主の前では、従順で虫も殺さないような顔しながら、ご主人様のひざの上で甘えてんだろうなぁ…なんて考えた次第。ヒナを皆殺しにしたネコは憎いけれど、それもネコの性(さが)だ。飼い主にも罪はない。



妻の話によれば、
今朝も早くから、なにも知らない親鳥がエサをくわえて飛んできたんだそうだ。


そしてすっかり静かになってしまった巣穴を覗きこんでから…しばらくは近くの木の枝に留まっていたけれど…ヒナのために運んできたはずだったエサを自分で呑み込んで…どこか遠くへと飛び去っていったらしい。


なんだかね……そのことがいちばん哀しい。