映画『ドリームガールズ』を観る

Tuduki2007-02-20

いよいよ今週末(現地時間)に迫ったアカデミー賞で、最多8部門にノミネートされている作品。

……といっても、主要部門では助演男優賞候補(エディ・マーフィー)と助演女優賞候補(ジェニファー・ハドソン)だけなんだけれど。
……といいつつも、エディ久々のハジケっぷりと、ジェニファーの肝っ玉ソウル歌唱でやはり注目度は高し。平日の昼間だというのに日劇PLEX@有楽町はそこそこの入り。しかもスーツ姿が多く意外に客層も高めでした。


さて、映画の感想としては……
編集面がちょっと不満。詳しいことはわからないけれど、『シカゴ』(’02年)なんかとちがって、この映画に出ている役者たちは、本当にちゃんと自分で歌えて踊れるヒトたちばっかりなんじゃないの? もしそうだとしたら、細かくカットを刻む映画的手法ばっかり何度も繰り返さずに、全体が見渡せる“引き”の構図や長回しをときには効果的に使って、歌や踊りのキレをじっくり堪能させてほしかったのに……。’90年代以降のMTV出身の映画作家的な細切れのカット割り連発は、鬱陶しくて飽きるしアタマ悪そう……スクリーンで観るには“お安い”感じ。

『シカゴ』のときは、おそらくプロほどには踊れないレニー・ゼルウィガー他への配慮で、パッパッと細かくカットを変えたり、指先がシャッと伸びたカットを効果的に挿入することで、上手な踊り&歌っぽく見せてたなぁ…と感心したものだが。(TV番組【スマスマ】の歌のシーンでもおんなじ手法を多用してます……ホントはダンスが揃ってなくても上手に見えるから:笑) でも今回の『ドリームガールズ』は、そんな技法を多用する必要があったのかねェ?…と。

もともと有名なミュージカル作品の舞台化だから、いかにもミュージカルらしい歌の掛け合いで会話が進む場面が多々あるのだけれど、そんな場面で普通の映画みたいにセリフを語る(歌)役者しか映らない構図にいちいち切り替わるのは、ちょっと興醒め。ミュージカルの舞台を見る観客の視界とおんなじように、歌のセリフで責められてるときの相手側のリアクションなんかを、全体としてちゃんと見せてほしいんだよなぁ……私は。それからもちろん、映画の中で描かれるショーの場面なんかも、バックダンサーズの動きも含めて全体像でそのキレを見たかったんだけど……私としては。


雨の日にお調子者の酔っぱらいが「♪し〜んぎんいんざれい〜ん〜〜」と交通標識のポールでふざけるように、歌とか踊りとかって、観客に“マネしたいなぁ…”と思わせてナンボだと思うのだ。だから「♪ゲロッパ!」の師匠だって世界中であれだけ逝去を悼まれたんじゃないか…と。刻みすぎのカット割りは、そういう“マネしたいなぁ…”という客の気持ちを著しく阻害するような、本来もっているはずの魅力を鈍くさせてしまったように、私には思えたのである。私事ではあるけれど、最近の我が家では、息子たちが米米CLUBの昔のライブ映像を見ながら、本能のおもむくままに歌と踊りをマネして大騒ぎ……その様子を間近で見てるからなおさら、それこそがエンタテインメントの本質だ…と考えてしまうのである。



……なんて書くと、ツマラナイ映画みたいだけど。
トンデモナイ! じつはものすごく面白かったのだ!! いままで書いたような減点があったとしても、それを軽く吹っ飛ばすようなパワフルな高揚感に満ちていて……しかも途方もなく、せつない。(まあ、だから逆に文句を言いたくなったワケでもあるが)


いま、念のためにオスカー・ノミニー一覧<http://www.eiga.com/index.shtml>を見た。最多8部門ノミニーの『ドリームガールズ』だけれど、編集賞&撮影賞部門とも候補にはなっていなかった。……ああホッとした。だって、私がこれだけ貶した部分がもしもプロの目には評価されてたら、自分の目がふしあなであることを露呈する羽目になるから(笑)。