食生活のボトムアップ〜パン編

食パンが嫌いなんです。


なぜ?…と訊かれても、「だって不味いから」としか答えようがない。え? でも美味しい食パンだってあるじゃん…と問い直されても、「でもオレには不味いんだもの」と答え直すしかない。

いや私だって、スーパーやコンビニに並んでる食パンじゃなくて、自分のところで焼いてるパン屋さんだとかデパ地下なんかの有名パン屋の中には、旨い食パンもあることは知っているけれど。(その中にもやっぱりたいしたことない食パンがあることも知っている) でもそういう食パンがあったにせよ、1斤300〜500円くらいもする食パンをわざわざ買いに行くなんて、「それほどのモンかよ、ふん!」と、ついつい考えてしまうのだ。

そんなワケで、食パンに対してはネガティブなイメージしかない。
たとえばサンドウィッチなんて、あれは具を味わうもので、でも具を手づかみすると手が汚れちゃうから、仕方なくパンで挟んでいるだけに思える。つまり、サンドウィッチの食パンてのは「食べられるハンカチ」みたいなモンだ。また、トーストにパターを塗った朝食なんてのも私には、炭水化物+脂肪分=単なる熱量補給…にしか思えない。クルマのガソリンみたいなモンで、「味わい」とか「食べる幸せ」なんか最初っから求めていない、志の低い食物…という感じを抱いてしまうのだ。……まあこれは、自分が育ち盛りの中高生時代に、夕飯まで待ちきれないほど空腹になると、仕方なく食パンにマヨネーズを塗ってしのいでた記憶のせいかも知れないけれど(笑)。あれもやっぱり、炭水化物+油分=単なる熱量補給だったように思う。


……などという認識だったのだけれど、じつは最近その認識を改めた。
新居へ引っ越したのを機に、妻がホームベーカリーを買った。寝る前に材料をぶち込んでスイッチを入れるだけで、翌朝には食パンが焼き上がるという楽ちんパン焼き器だ。子どもたちは喜んで食べているけれど、私は前述のように食パン嫌いだからまったく食べてなかった。ところが、つい先日コーヒーを淹れながら、その食パンの切れ端をなんの気なしに口に放りこんで驚いた……「え? なにコレ…旨いじゃん!」


「材料はなに使ってんの?……小麦粉とドライイーストスキムミルク、砂糖に塩…ってそれだけ?(後日注:バターを書き忘れました) 牛乳とか卵は入ってないの? …ああ、発酵中に腐ったらヤバイから…なるほど。それだけでこんなに旨くなるんだ…材料費は100円もしない? 安いねぇ…このパン焼き器をもっと買ってきたら、食パン専門店を開けるんじゃないの?…ンなわきゃないか。それならみんな自分とこでこの機械を買って自分で作るわな」


そんな程度の材料とフルオートマチックな機械で、こんなに旨い食パンが出来上がるとはオドロキだ。…つうか、それならスーパーで売ってる食パンっていったい何なんだ? まさか、わざと不味く作ってるのか?(笑) ……てな具合にずいぶん気になったので、実際にスーパーに出かけて食パンの原材料を調べてみた。以下に、とある食パンの原材料を書き上げることにする。(迷惑をかけないように、メーカー名&商品名とも伏せることにする。でも、どの食パンも似たようなモンだった)

原材料名:小麦粉、砂糖混合ブドウ糖果糖溶液糖、脱脂粉乳、牛乳、ショートニングイースト、バター、卵、食塩、乳化剤、イーストフード、ビタミンC、香料 (原材料の一部に大豆を含む)

なんだかいろんなモノが入っているなぁ。もちろん美味しくするためではなく、味と製造コストの妥協点をみつけるための工夫と苦労の結果だろう。


それにしても、ウチのパン焼き器でつくるときだって材料費は100円かかっていないのに、あんなに不味くしてまでコストを下げた食パンの原材料費って、いったいいくらなんだろうなぁ?……なんて考えていてふと思ったのだけれど、もしかしたら食パンのコストって、工場から各店舗までトラックで運ぶ輸送費の割合がケッコウ高いんじゃないのか? 軽いけどかさばる食パン、トラックにぎっしり詰めたところでその量はたかが知れている。極端だけどICチップなんかと比べたら、商品1個あたりにかかる運搬コストは100〜1000倍くらい違うはずだ。そう考えると近所のパン屋が、いくらスーパーの食パンよりは高いとはいえ、せいぜい100円増し程度なのも納得だ……よい材料を使っても輸送費がいらない分でカバーできるんだなきっと。


ウチで焼いた食パンなら、旨くてしかも安い!…ということに気づいた私だが、困るのは息子3人と妻で朝から1斤たいらげてしまい、私の分が残ることは滅多にないことだ。……ってゆうばかりか、パン屋でもないのに1日に何回もパンを焼くことになる日は、そう遠くない気さえする(笑)。