『スーパーマン リターンズ』を観る

Tuduki2006-07-07

アメコミ最大の人気者、スーパーマンの新作映画を観た。


クリストファー・リーブが演じた『スーパーマン2』の続き…という設定になっているらしく、「3」以降の映画は完全に無視されているのと対照的に、「2」の主題〜ロイス・レインとのロマンスは思いっきり引きずっている。そう、新作『スーパーマン リターンズ』は、“大人の”ラブ・ストーリーなのだ!

物語の舞台は、「2」から数年後の世界。5年間も地球を留守にしていたスーパーマンが“帰還(リターン)”するところから始まる。5年間もどこに出かけていたのかというと、自分の故郷の星を探して宇宙に旅立っていたのだ…最近流行りの“自分探しの旅”ってヤツですね。ところが愛するロイスに、旅立ちの理由どころかサヨナラさえも言わずに突然いなくなっちゃったもんだから、彼女はカンカン。久しぶりにスーパーマンが地球に帰ってみたら、彼女はすでによその男と家庭を築いていたのだ……しかも可愛い男の子のママになっていたなんて!!


……そりゃあ当然の報いだろ(笑)。

別れを告げるのが恐かったのかも知れないけど、無責任すぎるよ。それに、いつ帰るともわからない〜ひょっとすると帰ってこないかもしれないオトコを、オンナが昔のままで待ってるワケないじゃん。あ〜あ、せめてやっぱり「ボクはこれから故郷の星を探しにいこうと思うんだ。何年かかるかわからないけど、必ず戻ってくるよ…サヨナラ!」とでもアイサツしとけば、「私、待つわ…いつまでも待〜つ〜わ♪」と“あみん”な返事をハモり付きでもらえたかもしれないのに。……あとの祭り。

というワケで、他人の“奥さん”になった元恋人への愛をどう成就させるのか?…というのが新作のテーマなのだ。……いや冗談じゃなくマジで。新作のスーパーマンは、地球やアメリカを守るために巨悪と闘ったりはしない。ものすごくプライベートでパーソナルな“鋼鉄の男”なのである。黙って蒸発したり今さら横恋慕したりと、いち社会人としていかがなものか…と思わないでもないけれど、ちょっと新鮮な印象は受けた。


それにしても、
スーパーマンの生活って大変だよなぁ…と改めて考えた。ふだんは新聞記者クラーク・ケントという世を忍ぶ“仮の姿”しかし事件が起こると“本来の姿”スーパーマンになって大活躍!…という設定だけれど、現実を鑑みたら、どう考えても逆じゃないか? バットマンことブルース・ウェインだったら、莫大な財産があるから働かなくても暮らしに困らないけれど、スーパーマンの場合はサラリーマン(新聞記者)の仕事もしっかりやらないと生活できないもんなぁ……。メシも喰えない、家賃も払えない、ママに仕送りもできない(笑)。暗算世界一のOLだとか有名グルメサイトを主宰する課長さんとかが「仕事中の自分は“世を忍ぶ仮の姿”」とか言ったら、なんかヘンだもの。暗算やグルメサイトじゃ生活していけないじゃん。

そうやって考えると、バットマンは「道楽の正義」なのに対して、スーパーマンは「余暇の正義」ってワケだ。あるいは「趣味の正義」。アフター5に映画を観たりダーツをやる程度のボリュームでしかヒーロー活動にとりくめない。もしくは「ボランティアな正義」……海の大好きな会社員が、週末にビーチのゴミ拾い活動に参加する感覚でのヒーロー活動。いずれにせよ、“本来の姿”である仕事・業務に支障が出ない範囲で行わねばならない。

ちょうど『スパイダーマン2』が、そんなテーマで描かれていた。ヒーロー活動のやりすぎで学業がおろそかになって成績が下がっちゃって…と、「ヒーロー活動」がすっかり「アルバイト」の暗喩に(笑)。いや映画ではバイト先でもヘマやってクビになるんだっけ。じゃあ「サークル活動みたいな正義」ってところか。


でもまあ、スパイダーマンはまだ時間もヒマも多い学生だから。スーパーマンのほうが事態はもっとずっと大変で深刻だ。社会人ともなれば、仕事には残業がつきものだし、恋愛には結婚や不倫すら(?)つきものだしね……(笑)。