トンカツ定食がキライ

トンカツ定食が嫌いなのだ。

……と書くと「ええ？ トンカツ美味しいじゃん」などと言われそうだけれど。いや、私も大好きなのですよトンカツは。揚げたてのトンカツにがぶりと喰らいついて、冷えたビールをぐびり。うわぁ、想像するだけで垂涎だ。しかし、それでも私にはトンカツ定食がダメなのだ。なにがダメなのかというと、たった１種類の味で満腹にさせられてしまうこと…それがどうにも屈辱的なのだ私には。

トンカツ定食といえばたいていは、キャベツの千切りが盛られた皿の上に主役のトンカツがでんと鎮座して、飾りのパセリがちょろり。それにゴハンと味噌汁がついて、店によってたくあんとかしば漬けの小皿がちょこん。そんなものだろう。漬け物は箸休めだしキャベツだって似たようなものだ。結局トンカツの味オンリーでゴハンをかきこむことになる。……そんな味の単調ぶりが私にはどうもガマンならない。嗚呼でもそれなのに、食べ終わるとおなかはいっぱいだし、あろうことか“ああ旨かったなぁ…”とすら思ってしまう。舌のほうはガマンならない状態なのに胃腸のほうはすっかり満足するなんて……なんだか「オレはトンカツのパワーに屈服したのだ」という敗北感に打ちひしがれてしまうのだ。くそっ。

そんなワケで、無性にトンカを喰いたくなってトンカツ屋に行く場合には必ず、ブタ１種類の味では満足できずコロッケまたはエビとかイカとかアジなんかのフライをついつい追加トッピングしてしまう。「ミックスフライ定食」なんて都合のいいメニューを用意する店も多いけれど、その場合のトンカツはひとくちサイズであることがほとんどなので“トンカツは脂身たっぷりのロースがイチバン！”派の私には、痛し痒しである。なので、ついついロースカツを軸にトッピングで味のヴァリエーションをという展開にしてしまうのだが、ふつうのトンカツ定食だって十分に満腹感があるのに、さらに２品くらい追加するものだから……舌が満足するころには胃腸は完全にオーバーワークだ。ついでにオーバーカロリーでオーバーウェイト……屈辱感と敗北感を打ち消す代わりに、皮下脂肪と後悔を手に入れることになるとは。

まい泉やら和幸やらのデパ地下トンカツ弁当よりも、サンクスの「30品目弁当」なんてコンビニ弁当に惹かれてしまう私。晩酌の肴も、最低でも４種類くらいはないと満足できない。そんなにいろいろつくってくれませんかだなんて愛する妻にはとても頼めない……。頼めないから自分でつくる……。自分でつくると妻が箸持ってやってくる……。

先日、ペーターゼン監督の最新超大作『ポセイドン』を観た。私にとってはトンカツ弁当っぽい映画だった。なんとも納得いかない点が多いのに…それなのに、大盛りスペシャルサービス的なお腹いっぱい感に満たされて……屈辱だっ！（笑）