ネットなしでは生きられない

Tuduki2006-04-11

新居完成に浮かれて「ついでにテレビもイマ風の薄型大画面に替えちゃおうか」と考えたのだけれど、ブラウン管の画質を偏愛する私には、どうしても液晶はもちろんプラズマの画質さえも納得しきれず、結局いままでのブラウン管テレビを使い続けることにした。
あ…いや、こう書いちゃうと薄型テレビの画質をけなしてるみたいだけれど、じつは画質の進歩ぶりにはとても驚きました。ほんの2~3年前(いや1~2年前かも)の薄型テレビの画質ならば、ふふん…と鼻でせせら嗤う稚拙なモンだったのに、今回いろいろ見て「わぁ…いつの間にかこんなに画質が良くなってたのか!」とビックリ。……とはいえ、僅差でまだブラウン管の勝ちに思える私なので「もうちょっとガマンしてれば、もっと高画質な(しかもより安く!)薄型テレビが売り出されるにちがいない!」という目論見のもと、買い控えることにしたのである。


……なんてTV画質論は今日の主題とは関係なく、ここからが本番。
そんなワケで、ブラウン管テレビを使い続けることにした私は、みすぼらしくなったテレビ台だけはピカピカの新居に合わせて新調しようと考えたのだけれど……30インチ級のブラウン管が乗せられるだけの奥行きがあるテレビ台が、どこに行っても売ってない! 家具店でも電器屋さんでも、薄型テレビにお似合いの、薄型テレビ台しか売ってないのだ!
ものすごく困った私。そのときふと思いついて、もしかしたらネット通販なら…と「ブラウン管 テレビ台」と検索かけてみたら、あるあるあるある…いろんな種類がたくさん売られていた。ようやく購入できてひと安心した私であった。


……なんて書くと「インターネット・ショッピングは素晴らしい!」という主題になりそうだが、そうではない。今日の主題は「どうなってんだよ、現実の世界は!?」ということなのだ。

じつは今回の伏線であるかのように、同様の経験を既にしていた。ある日の私、シンガポール名物の海南チキンライスをつくろうと思いたち、インディカ米を探したのだけれど、スーパーはもちろんデパ地下のスカした食料品売り場にも置いてなくて散々だったのだ。そのときは結局あきらめて、多めに麦を入れて目先を変えて…まあそれはそれで旨くできたのだけれど、その話を知人にしたら「ネットじゃふつうに注文できるよ」と言われた。で、調べてみたらホントにふつうにインディカ米が通販されていてビックリした次第。……そんなことがあったモンで、今回のテレビ台ももしかしたら…と考えたワケである。

まあブラウン管用のテレビ台が店頭にないのは仕方ないかと思う。かさばるしイマドキでないのだから。でもインディカ米は店頭に置いといてほしい。ふつうのお米を買いにきた客が「あら、こんなお米もあるのね。ためしに買ってみようかしら」という展開にならないとも限らない。そうやって思わぬものを買ってしまうのが、お店めぐりの醍醐味ではないのかなぁ……


「世界最大規模の書店街!」を謳う神保町の本屋も、最近はどこに行っても同じような品揃え。図書新聞や新刊案内などの業界紙で、資料になりそうな本や趣味にあいそうな本の記事をみつけて神保町の書店街を探し歩いても、店頭にあるのは『国家の品格』のようなベストセラーばっかり。結局手ぶらで帰社して、机のパソコンからネット注文…というテンマツばっかりだから、最近じゃもう目と鼻の先にある書店街に目もくれず、最初からネット注文するようになってしまった。でもコレってホントつまらない。お目当ての本を探しているうちに「へぇ、こんな本があるんだ。ついでに買ってみるか」という広がりがないんだもの。


また、こんなこともあった。仕事で古写真を使いたくて探していたときのことだ。古写真とは、幕末〜明治・大正期くらいに撮影された写真。もともと白黒写真なんだけれど技師によって彩色されたものが多い。


▲古写真の例〜旧・横浜港郵便局

フォトライブラリ各社から国会図書館まであちこち探したが、なかなか借り先がみつからない。ひとつ見つけたところは海外の図書館だったが、以前海外の図書館に借用申請したときに、「不許可」というガックリな返事が来るまでに半年もかかった苦い経験からそこも却下。私は途方に暮れていた。ところが気まぐれでネット検索してみたら、なんとあっさり発見した。地方の某施設がきちんと収集&保存していて、その内容をネット上で閲覧できるように“ヴァーチャル図書館”化していたのだ。あんなに探し回ったのに、なぁんだ…という徒労感。

あのときはむしろ、ネットの有り難みを痛感して本当に救われた思いだったけれど、リアル社会っていったいなんなんだよ…と、自分が本当に生きている世界=現実が急激に色褪せていくように感じた。


ネット社会が便利になっていくのは結構なことだけれど、現実の魅力がどんどん薄れていくのはカンベンしてほしい…と私は苦々しく思うのだ。