世界遺産ナスカ展にいく

Tuduki2006-04-07

「ナー、スカッとするだろ。世界遺産ナスカ展
という惹句には、【AERA】かよオマエは!…とツッコミたくなるが、国立科学博物館で開催中の「世界遺産ナスカ展 ―地上絵の創造者たち」に行ってきた。

上野公園の桜も、ちょっと緑葉が出てきたけれどまだまだキレイ。広い陣地をとって花見の席取り番をするサラリーマンもポツポツと。

このところずっと忙しモードだったけれど、桜の季節が終わる前に来られて間に合ってよかったよ…と、日本橋三越で買った花見弁当でひとり花見気分の「ひなたで飲酒」。



さて、肝心のナスカ展だけれど、予想していたよりもずっと面白かった。
ナスカの地上絵といえば「行ってみたい世界遺産」アンケートで常にベスト5に入る人気者。でも実際にはいまだにほとんどすべて謎だらけの遺跡だし、地面に描かれた絵を日本に運べるハズもないし、はたして企画展として成立しうるネタがあるのかと疑問だったのだけれど……なるほど地上絵はあくまでも客をよぶためのシンボルにすぎず、企画展の趣旨は、あの地上絵を描いた(であろうと推測される)民族の文化を紹介することであったのだ。

会場には、彼らの遺した土器やらあれこれが多数展示されている。それらを見て実感できることは、彼らがある種の色彩パターンに特別に関心があったこと。それから、彼らがとても好戦的な民族だった!ということだ。これはちょっと意外だった。
彼らは、他の部族と闘って勝利すると、敵の首をはね大事な戦利品としていた。この生首のことを民俗学では「首級」と言って、英語でいう「トロフィー」とはまさにこのことなのだけれど、彼らはこの首級=生首がことのほかお気に入りだったようで、壺だとかコップだとかに生首の絵を“楽しげに”描いているのだ。会場には実物の「首級」も多数展示されているのだけれど、私にはむしろその陽気な首級の絵のほうがインパクト大だった。頭部には聖なる力が宿っていると考える習俗は世界各地に見られるので、首狩り自体はふつうに思えるのだけれど、陽気な生首の絵だとか首なし胴体が神様にパクパク食べられちゃう絵だとかが楽しく描かれた土器は、私の興味を強く惹いたのだ。2体のミイラ実物とその分析結果も非常に興味深かったし、民俗モノが好きな方々には積極的にオススメしたい特別展だ。

また、巧いなぁ…と思ったのは、地上絵のミステリー目当てで来た客でも納得して帰れるような仕掛け。冷静に考えると単なるこけおどしと言えなくもないんだけど、会場で見る限りは「おおっ!」と思えるインパクト大なバーチャル体験ネタがお客さんを待ちかまえているので、これまたお楽しみに。


熱心な博物館や美術館好き以外にはあまり知られていないけれど、何年か前に“国立”の博物館や美術館も独立採算制になった。国のカネをあてにしてダラダラとぞんざいな運営をすることが許されなくなったのだ。だから、たくさんのお客さんに来てもらうために、キャッチーな要素をふりまきつつわかりやすくポップな展示法に、ここ数年で激変してきた。昔風の重厚な展示が好きな諸兄には不満かもしれないが、私はいまの博物館のスタイルのほうが好きだなぁ……とはいえ「これはやりすぎだろ!」と思うこともないではないけれど。


ということで今回のやりすぎはコレだ!

▲ナスカの地上絵と土器の絵をかたどった金太郎飴(笑)。しかも仕上がり微妙だし……