カニ牧場

Tuduki2005-12-02

12月、いよいよ冬本番。カニの美味しい季節ですね。

……などと言うのは簡単だが、実際のところ美味しいカニにはほとんど縁がない人生だ。だって高いんだもの。スーパーでもタラバガニやズワイガニの脚が3〜4本の束になってビニールラップにぐるぐる巻きにされて売っているけれど、べらぼうな値段だ。なのに高いわりに、食べてみると「なんか違うんだよなぁ…」と思ってしまいものすごく損した気分になる。だからもう買わない。茹でて冷凍するのがダメなのだろうか? 
カニは自宅ではなくカニ料理専門店で食べないとダメなんじゃないかとすら思う。先月、次男の七五三祝いで妻の両親を招きカニ料理屋を予約して、カニの刺身や焼きガニなどを堪能したが…8年ぶりに食べる美味しいカニだった。いや“8年ぶり”だなんて、ずいぶんと見栄はった表現だな。正確には生涯でようやく2度目の美味しいカニ体験だったのだから……さて私は死ぬまでに何回、美味しいカニを食べられるのだろうか?


ところでスーパーで売っているカニといえば、さっきも書いたけれど、脚の部分だけを束にしてラップでぐるぐる巻きされていることが多い。ちゃんと同じ向きの脚がそろえてある。本体つきの場合はたいてい完全なフォルムを保ったまま、大きな発泡スチロールの箱に収まっている…なんだか標本みたいだ。

北海道などにある全国有数のカニ漁場ではこの季節、広大な海と大地を利用してつくられたカニ牧場で、カニの脚の収穫にてんてこ舞いだ。カニ牧場でたっぷりのエサを食べて大切に育てられ(=養殖され)たカニたちは、大きくなるとカニ工場に運ばれる。そこでは熟練のカニ職人たちが、大きなカニ切りバサミをそれぞれの手に構え、カニの到着を待ち構えている。カニ職人たちは皆、カニの脚を切る達人だ。ベルトコンベアで目の前に運ばれてきたカニを持ち上げると、その大きなカニ切りバサミを上手に使って、カニの脚を片側の分だけ、根元から素早くバッサリと切り取る。カニ本人が切られたことに気づかないほどの見事な早業だ。
切られた脚を急いでラップでぐるぐる巻きにするのは、若い見習いの仕事だ。こうしてカニ牧場で育てられたカニの脚は全国へ出荷されていく……。
さて、片側の脚を根こそぎ奪われたカニたちはその後どうなるかというと、ふたたびカニ牧場に戻されて放牧される。片方にしか脚やハサミが残ってないので、そりゃあ少しは動きづらいだろうけれど、でもそれも少しの間の辛抱だ。小学校の理科で習ったように、カニのハサミや脚は失われても、トカゲのしっぽみたいに何度も再生されるからだ。
参照→<http://members.jcom.home.ne.jp/k-kawashima/aaakaninokannsatu.htm> 
快適な環境のもと栄養たっぷりのエサをたっぷり食べて、カニたちの切り取られた脚はどんどん再生されてゆく。そして脚やハサミが元通りになると、再びまたカニ工場へ運ばれていき、今度は反対側の脚をバッサリ根こそぎ切り取られる。右側を切って、再生したら今度は左側を切って、次はまた右脚を切り取って……その繰り返しだ。そして、やがて最終脱皮を終えるまで成長しきって、これ以上は脚を切ってももう再生しない状態になるとようやく、全身まるごとの状態で茹でられて、大きな発泡スチロールの箱に“埋葬”されて全国のグルメさんのもとへ出荷されるのだ。




……なんてことは、勿論あるハズもない。
片側の脚を丸々なくしたカニがのそりのそりとカニ牧場を徘徊する姿を想像すると、手首から先だけしかないミイラの手が地面を指だけで這う様子にも似ていて、食欲もなくなるってモンだ……そんなこと、あるワケないけどね。

※カンベンして下さい。思いついたら思いついたまま、書かずにはいられませんでした。