怪談シリーズ(5) こういうのをやりたかったのだ

Tuduki2005-08-23

昭和40年代の【少年マガジン】の巻頭グラビアといえば、早世の天才クリエイター大伴昌司を中心に、子どもゴコロを強烈に刺激する企画が目白押しだった……そうだ。

あいにく私はその次の世代の子どもだったものだから、それらを読んで楽しんだ記憶は残念ながらほとんどなくて、そうした“伝説”は自分がこの業界に入ってから、偉大な先達の偉業の実例(←要するに当時の古雑誌)を、「ほほぉ」とか「へぇぇ」とか唸りながら、半分お勉強気分で眺めたような具合なのだが……そんな偉大なグラビア企画のなかに、私のツボ突きまくりの仰天企画があった。

それは、基本的には「サイクリングに出かけよう!」という趣旨のカラーグラビアなのだが……。たぶんどこかの自転車メーカーのタイアップ記事だったんだろうと思う。青空のもと気持ちよく草はらを走る自転車少年の写真に、サイクリングのコツ、整備のポイントなどがコラム的に添えられている。ちゃんとした、立派なサイクリング企画だ。ところが、サイクリングに出かけるその目的地がスゴイ……ミイラ見物なのだ!


『自転車に乗って、即身仏を見に行こう!』


即身仏とは、簡単に言えば「お坊さんが生きたまんまの姿でミイラになったもの」のことだ。土中や穴の中などにこもって、絶食して瞑想の修行をしながら、そのまんま死んだ(=仏になった)ミイラ……その【少年マガジン】のサイクリング企画は、それら即身仏が祀られている寺を見に行こう!…と提案していたのだ。なもんだから、前述の“青空のもと気持ちよく草はらを走る自転車少年の写真”の上に、おどろおどろしい様相のミイラの写真が重ねられているレイアウトで……本来なら決して相容れることのない“陰”と“陽”が同居したそれは、なんとも表現しがたい異様な雰囲気を醸し出していたのである。

……私は笑い転げた。と同時に感嘆した。わざとやったのか偶然こうなっちゃったのかそれとも担当者のネジが狂っちゃったのか判断するのも難しいような、微妙かつ絶妙な立ち位置の“笑い”そして“気味悪さ”に、シビレまくってしまったのだ。



で、感動のあまり……このネタをパクっちゃえ!と考えた私だ。まあ「パクる」じゃあ他人聞きが悪いので…「換骨奪胎」と言っってしまおう。ということで、こんな企画を考えてみた。


『新車でGO!! 心霊スポット、ドキドキわくわくドライブ!』


自動車各社の最新のクルマの試乗記事なんだけど目的地は心霊スポットという企画。もちろんネタは、小坪トンネルみたいなクルマがらみの恐怖体験onlyだ!
……というザックリした案をもって、自動車記事に強い編集プロダクションの知人に相談したのだが、「交通事故の話題に敏感な自動車会社が、心霊スポットめぐりなんてOKするワケないじゃん!」とあえなく撃沈。またもボツ企画になった次第。でもまあ当然だよな…と思った。てゆうか【少年マガジン】の自転車メーカーはよくOKしたよなぁ…と思った。まあ、ナンでもアリな時代だったんだろうな…そういうイキオイのある時代がなんとも羨ましい。


ただ、この心霊スポット企画はなんとかカタチにしたかったので、方向修正した結果…

『夏のデートはコレでキマリ! オシャレなレストラン&心霊スポットの湘南ドライブMAP』

…みたいな【じゃらん】や【るるぶ】をパロった企画になりました。よかったよかった。