怪談シリーズ(2) 金縛りと『妖怪大戦争』

Tuduki2005-08-12

金縛り体験は2回ある。

「金縛り」というのは「体は眠っているのに脳が起きている状態である」という説が定着しているが、私はもっと単純に「寝ぼけているヒトが動きたくないだけ」だと思っていた。ほら、よくあるじゃないですか…ものすごく眠くてリンリン鳴ってる目覚まし時計に手を伸ばすことすらできないときって。動きたくない動けない……そういう状態をフツーのヒトなら「眠すぎて起きられない」と考えるのが当然なのに、オカルト好きなヤツは「起きようとしている自分を、なにか超常的な存在が邪魔している」って考えちゃうんだよな、どうせそんなもんだろ…と思っていたのだ。自分が金縛りにあうまでは。

最初に体験したのは高校生のとき。期末試験にそなえて一夜漬けで勉強しているときだった。
完全に徹夜してしまうと、本番の試験中に眠りこけるおそれがあるので、朝4時ごろ、ちょっと眠ることにした……そのとき金縛りにかかった。腰のあたりに感電したようなしびれが走り、そのしびれがビリビリビリ…と全身に広がった。これはたしかに「寝ぼけているヒトが動きたくない」のとは違うぞ! カラダ全体が長時間正座したときの足になったみたいな感じ…じりじりして動けない!
おお、これが金縛りかぁッ!…と感動した高校生の私だった。残念ながら、お経も聞こえなかったし老婆の姿も見あたらなかったけれど。

二度めの金縛り体験は3年くらい前、自宅マンションでのこと。
深夜に突然かかった。今度もお経は聞こえないけれど、誰かがダダダダ…と走る足音がした。座敷わらし? それともまさか軍人の霊? 確かめたいが、動けない…目も開かない…声も出ない。……困っていたら、突然「んぐっ」、寝ている私の腹の上を踏んづけていくではないか。……とっさに思った。オレはまだいい。でも子どもたちを踏んづけて走られるのは絶対にイヤだ。私は全身の力をふりしぼって……叫んだ!
「こらあッ、走っちゃダメ!!」
オバケ相手に「○○しちゃダメ!」なんて子どもを叱るような口調だったのは、考えてみりゃマヌケな感じだが、ともかく、そう叫べた瞬間に金縛りはとけた。もちろんそこには見慣れない子どもの姿も軍人の姿もなかった……妻の驚いた顔があっただけだ。「夜中に突然、大声で寝言を叫んじゃダメでしょ!」と、子どもを叱るような口調で妻に叱られた。

……まったく「親は強し」である。ということで、子どものことを案じれば金縛りを破れることがわかったので、現在の私はもう金縛りなんてヘッチャラなのである。

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映画『妖怪大戦争』を観た。
「くだん」が出てきたのは、なんだかすごく嬉しかったなぁ……。「くだん」というのは、牛の体に人間の顔をした妖怪。生まれてすぐに不吉な予言を告げたらすぐ死んでしまう…という気味の悪いヤツだ。江戸時代の瓦版なんかに、どこそこでくだんが現れてこんな予言を残して死んだ…という記事と挿絵が、意外にたくさん残っている。
妖怪としては現代ではマイナーな「くだん」だけれど、今もちゃんと日本語として使われている。「件(くだん)のごとく〜」という表現の「くだん」とは、この妖怪のことを指している…とされる。ほら、ちゃんと漢字も「人(にんべん)+牛」になっているでしょ? ……まあ、実際にはもちろん「くだん」という語句のほうが先にあったんだろうと思うけれど。

夏休み映画にふさわしいお祭り感とバカバカしさに充ち満ちた、楽しい映画でした。夏のうちに観たほうがいいと思う…メランコリックな晩秋とかにビデオで見たらズッこけるぞきっと。

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じつは妖怪みたいなものを見たこともある。
独身のとき住んでたアパートで…真っ昼間に。部屋でテレビを見ていたら、台所の床の上を、ビーチボールくらいの大きさの真っ黒な獣毛のかたまりが、コロコロ転がっていったのだ…ただそれだけ。なんだ今のは?…とあわてて後を追ったが、なんにもいなかった。幻覚とはちょっと言い難い。結婚前の妻とふたり一緒に、真っ昼間に目撃したのだから……飲んでもいなかった。…と思う…けど、ちょっとは飲んでたかも。まァたとえ飲んでてもビール程度だ。幻覚を見るほどは絶対に飲んでない!…たぶん。……なんかあやふやだなぁオレ。

ありゃいったいなんだったのだろうか?