夏休みの小学生

Tuduki2005-08-03

木の柵から落っこちて尾てい骨をしこたま打った。

妻が健康診断を受ける午前中、息子3人の子守を引き受ける。マンション住まいだというのに、3人で部屋の中を絶叫しながら走り回るものだから「おいおい、これじゃマンションが売れる前に追い出されちまうよ…てか売る前に壊れちまうじゃんか」と心配になり、妻が診断最中の病院近くにある公園まで連れていく。

子犬のように原っぱを走り回る息子たち……よしよし、男の子はこうでなきゃ。ちりちり焦げるような陽射しと、むせ返る草の匂い…よしよし、夏休みはこうでなきゃ。
散歩していた元気のいいおジイちゃんが、「今あっちのクヌギにカブトムシがいたよ」と教えてくれた。「捕まえた〜い!」と息子たちが声を揃える…で、案内していただく。……いた! 長男が背伸びして虫とり網を振り回すが、まだ届かない。よしホラ!…と肩ぐるまをしてやる。「捕れたよ!」…大喜びの長男、小学3年生。そういえばコイツが、自然の中にいる生き物を自分自身で捕らえたのって、いまこの瞬間が初めてだったのかもしれない。遊園地なんかの夏休み企画で、網の中にこさえられたニセモノの森にばらまかれた養殖のカブトムシを捕まえたことはあっても、“天然モノ”を自分で捕まえたのはこれが初めてだもんな……そりゃ嬉しかろうよ。自分が小学生だったころの夏休みのキモチが甦る。

クヌギをよく見ると、もうちょっと上のほうにもう1匹カブトムシを発見。ふたたび肩ぐるまをしたがそれでもまだ届かない。「やっぱ無理かなぁ…」と残念そうな息子たちに、「無理なもんか、ちょっと待ってろよ」と、いつのまにか私も小学生に戻っていた……小学34年生だ。そして近くにあった高さ1m少々の木の柵に登り…バランスを取りながら柵の上に立ち…カブトムシめがけて網を大きく振り…………勢いよく落ちた。足から落ちたつもりだったが、勢い余って強烈な尻もちをついた。尾てい骨から脳天まで電撃が走った。むぎゅぅ……

「どうだ? 網ん中に入ってるか?」「うん、でっかいオスのカブトムシ!」 ……よぉし、よく頑張ったぞ小学34年生のオレ。


私が、生まれて初めて自力で自然の生き物を捕らえた記憶は、小学1年生の夏休み…親の田舎で川釣りをしたときのことだ。全然釣れなくて、いとこたちもあきらめて次つぎ帰るなか、ひとりねばっていた夕方……突然、腕にぐぐっと衝撃! 慌てて全力で引き上げると、釣り竿の先に伸びた釣り糸の先に光る銀色のカラダ…やった! 針の外し方も知らないものだから、釣り針にぶら下げたまんま全力で走って帰った……あのときのキモチは、腕に響いた魚の力の衝撃から大声で叫びながら走った感激まで、今でも鮮明だ。

「へぇ…オイカワだね。よく釣れたなぁ」とお袋。そうか、あの銀色の川魚はオイカワっていうんだ…ボクがひとりで捕ったんだぞオイカワを! カッコイイなあオイカワ…あとでじっくり見よう! 何度も思い出してはニヤニヤしながら風呂に入ってサッパリして食卓につくと……私の釣ったオイカワは、既にテーブルの上で“料理”に変わり果てていた。

……あのときのショックも、今でも鮮明だ。