『逆境ナイン』も観たけれど…

Tuduki2005-07-11

原作マンガのファンにも、原作未読の映画ファンにも、けっこう評判がいいようだが……
私にはちょっと「むむむむむぅ…」だった。

原作を生み出したマンガ家・島本和彦氏がおのれの魂から搾り出した台詞だから、一言一句に言霊(ことだま)が宿っているのだ。そのおかげで映画の何カ所もの場面で原作マンガ同様に笑わせてもらったが……根本的なベクトルの向きが違っているのが気になって仕方なかった私には。

島本作品というのは、どれもこれも、一生懸命すぎるあまりに破綻してしまうところが面白いのだ!…と思う。1本の木をじっくり見すぎるあまりに森全体がまったく見えなくなってしまう歪みが面白いのだ!…と私は思う。そしてさらに、「そういうのはよくないことだ、間違っている」というお決まりの道徳的論法に陥ることなく、歪みが歪んだまま力を蓄え、そのまま突き抜ける(または突き抜けられずにしくじる)から気持ちよく笑えるのだ!…と私は思う。

……なので、「笑ってよ、ほらボクってバカでしょ」アピールを繰り返し、単なるスチャラカ・コメディとなってしまった映画『逆境ナイン』は、いくらつい笑ってしまおうが、島本和彦氏本人が嬉々として出演していようが、私には到底受け容れられない映画なのだ。