『宇宙戦争』を観る

Tuduki2005-06-30

水曜公開という変則公開の初日6月29日、ミクシィの「パニック映画振興会」の方々に合流して『宇宙戦争』鑑賞。


プロレスの技の強弱を司るのは、物理的負荷の大小ではなく「説得力」の有無である……みたいなことを言ったのは、たしか村松友視だったと思うが。まあ誰の発言だとしても、けだし名言!…と私は思う。(ところで“けだし”ってどんな意味だ?)

力道山の空手チョップもスタン・ハンセンのウェスタン・ラリアットも、その当時には“必殺技たる説得力”を有していたのだ。だがやがて時を経て“説得力”は徐々に弱まり、その結果ラリアットは“決め技”から単なる“繋ぎの技”に降格したのである。空手チョップに至っては「昭和」的なものを示す記号〜パロディでしかない。




【以後、存分にネタばれしています〜要注意!】
そういう観点からすれば、100年以上前に作られた原作のオチには、もはや決め技としての「説得力」はない。釋英勝のマンガ『ハッピーピープル』での「酒」、ティム・バートン『マーズ・アタック』での「歌」等々、本家のオチを踏まえたうえでの様々なアレンジ&パロディが出し尽くされた感のある現在、“天才”スピルバーグが指揮する映画なら、どんな斬新なオチ=決め技を見せてくれるんだろう!?……私にとってはそこが最大の関心事だったのだが……まさかイマドキ原作そのまんまのオチだとは!……呆然。
まあ『インデペンデンス・デイ』で、「原作がウィルスなんだから、現代が舞台ならコンピュータ・ウィルスだろ」と、(あの映画にしては)まっとうにリニューアルされたオチが既に使われたあとでは、なかなか斬新な新オチも出てこないかも知れないけれど…………せめて、ウィルスのネタを“繋ぎの技”に使いながら別展開の“決め技”でサゲるような決着をつけられなかったもんだろうか。そこにひとひねりあるだけで、だいぶ読後感が違ってくると思うのだが。

とはいえ、全編にわたって文句&ツッコミをたっぷり言いたくなるわりには、結構好きな気がする映画でした。
以下、興味を持った点を羅列。
トム・クルーズが本当に100%出ずっぱりで、トムがいま見聞きしていることだけで物語が進行し、世界どころか隣町がどうなっているのかすら判らない…という構成が巧い(というか私の好み)! 判らない、情報がない…ということがいかに恐ろしいかが実感。(大阪では何体か倒したらしいぞ!…というアレも、単なる流言飛語でしょ)
●宇宙人が最後まで、何を考えているのかつかめない得体の知れない存在であったのも私好み。なまじコミュニケーションとれちゃうと、気味悪さの奥行きがなくなるから。
●前のジョージ・バル版『宇宙戦争』を想起させるシーンが随所にある……オマージュ? その反面、『ジュラシック・パーク』を想起させるシーンが多いのはちょっとウザい……セルフ・パロディ?
●踏切のシーンは最高に笑えてなおかつ怖かった。そんなスピルバーグらしい“怖オカシイ”場面が随所にあるのはファンとしてとても嬉しい。
●宇宙人(火星人?)の兵器=トライポッドから出てきた宇宙人(火星人なの?)が、トライポッドとよく似た姿だったことにえらく感心……そうか、トライポッドって宇宙人(火星人じゃないの?)にとってのヒト型ロボット=ガンダムだったんだ!
●冒頭で描写される、トムちん演じる主人公の「クルマ好きで巨大重機の操縦が得意」という設定。当然クライマックスの伏線になっているんだろうと思ったら、まったく関係なかった。ちょっとぐらい機械いじりが得意だからって、そんなのまったく役に立たないんだよ…という皮肉なのか?
ティム・ロビンスに関しては……あまり触れたくない。後味もものすごく悪いし、ああいうキャラづくりした意図がどうもわからない。
●どうにもこうにも無力な人類…という原作のテーマどおりだとカタルシスがまったくないからとはいえ、とってつけたような反撃シーン2箇所の映画的効果ってどうなんだろう? 特に最後のは、既に勝手に死にかけている最中の敵の、背中をただ押しただけだしなぁ……あんなもんでカタルシスって得られるものなのか??



たくさんあるツッコミどころのひとつに、「後半では人間を生け捕りにして食糧にしていたのに、前半では一瞬で灰にしていたのは何故だろう? もったいないじゃん」というのがあったけれど、
あれはきっと、最初は全部捨てるつもりでキレイに灰にしていたんだけれど、宇宙人の誰かがちょっと試しに食べてみたら、予想外に旨かったんだろうね人間が。腰にびくみたいな編みカゴをぶらさげて捕まえた人間を集めてたトライポッドの姿が、アユ釣り師みたいだったんで笑った。

灰になるまで焼くこたないけど、よく火を通してから喰っとけば、菌にやられることもなかったのに……とか考えると、なんだか食中毒に気をつかう夏場の焼き肉屋みたいだな。そういや、「もともと捨てるつもりだったのに喰ってみたら旨かった…」なんて展開も、ホルモン料理の起源(捨てる部位=放るもんがホルモンになったとされる)みたいだし…………ああっ、それで「大阪」つながりなのかッ! なるほど!(……絶対に違います)