『シンデレラマン』を観る

Tuduki2005-06-15

私生活の暴れん坊ぶりで、いつもいつも世界を笑わせてくれるラッセル・クロウの最新作。

「家族の生活を守るために、現役復帰したボクサーの物語」……まとめるとそんなところか。家族愛を貫く父親の姿という、いかにもな泣かせ系のニオイぷんぷんの物語。妻役がレネー・ゼルウィガー、監督はロン・ハワード。でもって実在人物の実話がベースなもんだから、泣かせ系のニオイは二次曲線的に増幅。たしかにロン・ハワードお得意のテクニック炸裂で、「いったいどこまでが“本当の実話”なのやら…」と毎度毎度の茶々を入れたくなるような、演歌っぽい展開でした。
……という書き方をすると批判しているようにみえるが、観客がロン・ハワード作品に求めているものは、もともとそういう路線なので、これはこれで正しい。私も創り手の思惑どおり、わかりやすく泣いてわかりやすく感動した。

配給会社(ブエナビスタ)の宣伝展開もわかりやすく、「夫婦愛」「親子愛」を売りにするようだけれど、私にはもっと根源的な…“父親像”とかいうよりもさらに一層シンプルな…“生きることの根っこのほうのなにか”みたいなものをぼんやり感じたのだが……そうぼんやりと思っていたら、プレスリリースに載っていた直木賞作家・角田光代さんの寄稿が、私の“ぼんやり”部分をもっとちゃんと見えるカタチにしてくれていた(もちろん完全に合致するワケじゃないけれど)。たぶんパンフに使われる予定の文章なのだろう。パンフで是非ご覧ください。

ラッセル・クロウがものすごくヨカッタ。すでに十八番になっている「背中が語る男の強さそして寂しさ」というおなじみの演技に加え、「雨に濡れた子犬の瞳」という母性本能をキュンとさせるワザも手に入れたようだよあの男は。[強さ←→弱さ]間の振れ幅が超ワイドに広がった印象。こんなシゴトっぷりを魅せつけてくれるのなら、普段は別にバカでもイイじゃん…と思わずにいられない。電話機でもなんでも好きなだけ投げてくれ。

一度はライセンスを剥奪され引退したボクサーが、ひょんなことから現役復帰して再び栄光の階段を昇り始める…というアメリカン・ドリーム。だから「シンデレラ男」なのだが、長いブランクがあって子どもが3人もいて、闘う相手は若さと破壊力が売りのチャンプ…という、ラッセル・クロウ(昭和39年生の41歳)演じる主人公。ロートル感漂わせる要素をあれこれ積み重ねているけれど、実話の本人はそのとき実際のところ何歳だったんだろうかと思って調べたら……なんと28歳! なんだよ、まだまだ十分現役バリバリでやれるトシじゃんかよ……騙された! 
まさにロン・ハワード十八番の“実話”マジック…………!