だまされた

Tuduki2005-05-26

ケン・ワタナベが重要な悪役で活躍…という話だった『バットマン・ビギンズ』の完成披露試写を観てきた。

私にとっては赤点モノのトンデモ映画だった。監督のクリストファー・ノーランって、マンガの文脈を読めない&作れない御仁なんじゃないかな。
どうやらリアリティにこだわっているようなのだが、もともとの設定も今作の脚本もリアルとは言い難い(だからこそ面白がれる)ものなのに、そんな土俵でリアルにこだわってるものだから、あちこちで矛盾やリアリティのなさが露呈して、全体的にほころびまくってた。おまけに客に“緊張”ばかり強制して、“弛緩”がまったくないイッパイイッパイな演出なものだから、内容のバカバカしさを笑い飛ばすことも、客は許されていない……そんな窮屈な映画だった。少なくとも私にはそう思えた。カタルシスもないし…という以前にそれを設けようとする姿勢も伺えないし。…とまぁカタルシス云々は感想じゃなくて、媒体は違えど物語を発信する者として不可解に思えただけだけれど。

映画的修辞としては、東洋テイスト好きなスノッブな欧米人に受けそうな趣向をベースにひいたのは興味深いと思ったけれど……そういう客層の市場ってどのくらいの規模なんだろう? 最大多数を目指して最大公約数の好みを拾うはずのデカバジェ映画で、これだけ日本やチベットやら風味の飾りをしても大丈夫なんだろうか…と商売的に気になった。
もっともその“日本やチベットやら風味”の演出にしても、当の東洋人の我々からすれば「???」と噴飯モノなのが、我々にはなおさら痛々しい。まあそれは自分じゃ行ったこともないクセに南仏やサンタフェ風の家を建てたがる日本人みたいなものか……ってそりゃオレじゃん。


……という具合で、私には無惨な出来映えの映画でしたが、出口で偶然バッタリ出くわした映画ライターの友人y.氏は「ヨカッタんじゃない」と言ってたので、ご安心ください。



※来週月曜にPR記者会見あり。主演のクリスチャン・ベールのほかトムちんの彼女も出席予定、また「カメオ出演」の渡辺謙も出席するようだ。