「100%」を信奉しない

Tuduki2005-05-11

コーンスターチコンスタンティンって似てるよなぁ……いつものキリン一番搾りを飲みながらそう考えた。

コーンスターチとはトウモロコシを原料にしたデンプンだ。スナック菓子の原料によく使われるが、麦100%じゃないビール〜要するにほとんどのビールで、麦のデンプンの不足分を補う目的で使用されている。材料費を安くすませる目的が第一なんだろうけれど、風味を軽くする効果もあるそうだ。たしかに私のように日光の下で飲むにしては、ヱビスビールだとちょっと重い。ヱビスはキン!と冷房の効いたちゃんとしたメシ屋で、しっかりした味の料理の傍に添えられるのが一番似合うように、私には思える。

まあヱビスは御立派な100%ではあるけれど、「○○100%!」をことさら売り文句にされると、ついついその裏に巧妙に隠した秘密が気になるもんだ。

もう10年以上も昔の話だが、某メーカーが新製品の缶飲料のPRにやってきた。「本当の意味でおいしい」ことをコンセプトにしたその商品群のひとつにパイン・ジュースがあった。いや正確には“ジュース”じゃなく “ドリンク”か、果汁70%くらいだったから。「へぇ、果汁100%のより旨いくらいですね」と誰かが言うと……
「ええ、なにしろコレは本物の果肉部分だけを原料にしてますから!」と胸を張る某メーカーの社員。
は?じゃあパイン100%のジュースって何を原料にしてるんだよ…と思ったがすぐ気がついた。シロップ漬けの缶詰パインの果肉…あれをくり抜いたあとの、芯や皮のところにまだ残っている実の部分! 他社の中傷になりかねないので詳しい説明はしてくれなかったが「大手果物メーカーではイチバン美味しい部分は缶詰にして、その残りカスをジュースにしているんですよ」と、その人は言いたかったのだ。

どんな部分を原料にしようが果汁100%という表示は嘘ではない。また、どんなに美味しく仕上げても果汁70%は「ジュース」とは呼べない。さて消費者は「100%」と「70%」のどちらを好むだろう……結局いつのまにか、その缶飲料シリーズは消滅した。



最近では紙パック入りのリーズナブルな日本酒でも、コメ100%をウリにしたものがある。原料が米と米麹だけなら純米酒のはずだと思ったら「純米酒ではありません」という小さな文字が書かれていたりする。
この「???」についての答えは、こちら→http://www.hi-ho.ne.jp/~koizumi/maborosi0003.htmを読めばわかる。つまり本来なら、酒を不味くするので削って捨てるべき部分まで原料に含めてカサ増ししているわけだ。また、日本酒の記事を書くついでにこの件も調べていた知人のライターによると、より効率を増す(早くたくさん作る)ために、原料の米を粉々に潰してドロドロに溶かしてから仕込むんだそうだ。……でもこれだって「コメ100%」という表示にウソ偽りはない。

それでもまあ雑味臭みをガマンするか或いはそんな雑味も個性だと好意的に解釈することができれば、醸造アルコールで水増しした(ほとんどの)酒よりはマシかな…とも思えるものだが、なかには宝酒造の【米米辛口】のように「米が原料の醸造アルコールで水増ししてるんだからオレだってコメ100%だろ!」と言い張る「米だけの酒」もあるから要注意だ。



かつて、野良ネコの肉を使っているという都市伝説が非常に有名だった某ハンバーガー屋は、「ビーフ100%です」というTV-CFまでやってウワサを打ち消したけれど、骨だろうが目玉だろうがひづめだろうが、どこの部位でもミンチして混ぜ込んでしまえばそれはそれで、ウソ偽りのない「牛100%のハンバーガー」だ。
まあそれは冗談にしても…と言いたいところだが、アメリカ本国のチキンナゲットは実際に、卵が産めなくなった古鶏を骨ごと砕いて作っていたからなぁ……最上部位のみを使用したネコ肉バーガーのほうが旨いよなきっと、と私は思う。もっとも「旨い」からって「喰いたい」とは限らないけれど。

(注記:この得体の知れないチキンナゲットは添加物なども問題になり現在はちゃんとした鶏肉になっています……ということです。また日本の店ではもともとちゃんとした鶏肉を使用しているそうなのでご安心を)