“夏休み”が終わる

Tuduki2005-03-25

気がついたら、30代生活も残り1ヶ月を切っていた。とうとう来月で40歳になるのだ。

10年前。30歳になるのがイヤでイヤでたまらなかった。「お前はもう若くないのだ。若い時間は二度と戻ってこないのだ」と宣告されたような気がして。でもまあ、一応「青春」とかそのへんの概念にけじめをつけようと思いたち、30歳の誕生日当日から有休をとって「お伊勢参り」をすることにした。「お伊勢参り」といえば、4月2日公開のクドカン初監督作品『真夜中の弥次さん喜多さん』で題材になっているように…ってゆうより元ネタの十返舎一九作『東海道中膝栗毛』で題材としているように、江戸っ子が一生に一度できるかできないかの娯楽〜すなわち大旅行だ。つまり私は、江戸時代の庶民に倣って、30歳突入の覚悟をするための“一生に一度”級の大イベントとして、伊勢方面へ向かったのだ。

……行ってみてはじめて知ったのだけれど、伊勢神宮って近代日本をファシズムに導くために利用された「国家神道」の本宗だったのね。現在では考え方もだいぶ変わったけれど、10年前の私は「天皇制なんか廃止して皇居は公園にすればいいんだ」という考えだったので、いざ現場に着いてから国家神道の件を知り、「ファッショの中心だった神社なんかお参りできるかよ!」と、せっかく行ったのに参拝せずに周囲をぐるっと見回すだけで帰ってきたのだった。同行の妻には「目的地がどんなところか調べもしないで600kmもクルマ運転してきたの?……バッカじゃないの」と言われた。そうか私の30代は、妻からのバカ呼ばわりで幕を開けてたのか……いま気づいたよ。

いざ実際になってみると、30代ってなんて素晴らしいんだ!…と思う毎日だった。肉1kgをぺろりと食うことはできなくなってもバカやムチャをやるくらいの体力はまだまだ十分あるし、仕事は自由に裁量できる範囲が広がってやりやすくなったし、そこそこ遊ぶカネも若い頃より増えたし。それに廻転しない寿司屋でカウンターに座るのが怖くなくなったし、見知らぬ飲み屋にひとりで入るのもへっちゃらになった。
公私共々のいろんなトラブルや騒動も込みで、30代は本当に楽しかったよなぁ…と、いま改めてそう思う。なんかこう人生全体を眺めたときの30代ってのは、ちょうど8月みたいな…夏の真っ盛りの時期だったんじゃないか…そんな気がする。するといまの私は、だいたい8月30日の夜くらいだ。夏休みもあと1日で終わり。宿題もだいたいは済ませたけれど、手をつけてない宿題はもうあきらめた……そんなところか? 39歳を迎える去年の今ごろは、夏休みでいえば8月28日くらいの気分で「あとわずかで終わる30代を、後悔しないように遊ぶだけ遊ばなくちゃ…」という焦りみたいなのがあったけれど、「今さらジタバタしてもしょうがないもんな」と達観しちゃった現在の気分は、まさに“8月30日の夜”的だ。

40歳を迎えるのはあんまりイヤじゃない。ハリウッド・スターから周囲の友人にまで、40代になっても元気に「夏」気分でいるヒト達ってたくさんいるもんなぁ……。でも次の50歳になるときには「人生の折り返しターンを確実に越えてますよ」と自覚してガックリきそうだけれど。
まあ「暑さ寒さも彼岸まで」と言うように、真夏みたいな陽気の日だって〜40代になってもバカやる機会だって、しばらくはあるんだろうけれど。それでもいずれは、今度は息子たちがバカやムチャをやる番になって、それを微笑ましく見守ったり気を揉んだりするような「実りの秋」へと、だんだん人生はシフトしていくのだ……そしてもう私の「夏」は二度とやってこない。


……てなこと言っちゃって。『葉っぱのフレディ』かよオレは。