『アビエイター』を観る

Tuduki2005-02-22

◆◆映画の具体的内容には触れませんが、先入観を与えるおそれはあり◆◆

大富豪…飛行機…冒険…世界記録…プレイボーイ…ハリウッド映画…ロマンス…野望…スキャンダル…そしてディカプリオの勇姿が映える宣伝写真! 『アビエイター』は、これらの要素から観客が思い描く内容とは180度反対の映画だった……まさか“お笑いホラー”だったとは!

ハワード・ヒューズの名前は有名なので知っていたが、じゃ具体的にどんなことやった御仁なのよ…ということになると私には、数年前にTV番組(←たしか『知ってるつもり?』だと思う)で見た内容程度の知識しかなかった。ハワード・ヒューズというのは、あまりにも破格の…規格外の…常識の枠をはるかに超えた(or常識の枠から逸脱した)人生を送った人物なので、その程度の予備知識が『アビエイター』鑑賞に役立ったのかor無垢の状態で観られず邪魔になったのかは判らないが、少なくとも私は「ハワード・ヒューズはカッコイイ」という先入観を抱いていた。その人物を演じるのがあの「レオ様」ことレオナルド・ディカプリオなのだから当然、『アビエイター』は“男臭いけど見た目もカッコイイ”映画なのだと思いこんでいた。別の言い方をすれば、スコセッシ作品のくせに“おんなこどもにもウケる映画”になっているのだろう…と思いこんでいたワケだけれど、実際にはものすごく“カッコ悪い”映画だった。ディカプリオは徹頭徹尾じつにカッコ悪い。本当はカッコイイ場面では、顔がカッコ悪い。彼はカッコ悪さを貫いているのだ。

オスカーの作品賞・監督賞はわからないが、主演男優賞をディカプリオが獲るのは確実だろう。もともと本当は巧い彼が、ああいう役柄(←観ればわかります)を演じるのだから。そしてもうひとつ確実であろうことは…「レオ様」ブームは再来しない。 “おんなこどものアイドル”「レオ様」はこれを以て、我々“臭い”側の人間になったのだ!…と思う。

同じく「破格外の実在人物」を題材にした映画ながら、『Ray〜レイ』がレイ・チャールズ本人の清濁併せた“ありのままの姿”を描こうとしているのに対し、『アビエイター』はスコセッシら創り手の解釈による“決めつけ”で力ずくで描いているという差異が、私には興味深かった。

この映画を「好きじゃない、キライだ」という客もかなり多いだろうなと思う。「大作感はあるし、まぁまぁかな…てゆうかどうでもいいや」という客はもっと多いような気がする。けれど私に限っては相当にツボでした…私が観たい類の主人公の映画だったので。