オレの屍を越えてゆけ

我が家は息子ばかり4人兄弟の核家族であるが、
子ども服を買うときに最重要視するのは、
もちろんなににも増して「頑丈である」ことである。


“丈夫”なんて生易しい表現ではなく“頑丈”なのである。
すなわち、ちょっとスッ転んだりカベに激突したくらいであっけなく破れたり綻んだりせず(たとえ子どもが血まみれでも服は大丈夫)、洗濯機で何十回洗っても原形を保っていられるような、そんな服である。いくら洗っても落ちないソースやケチャップの染みが残っても気にならないような絵柄だと、なお一層好ましい。


……頑丈だと弟たちのお下がりにもなるって? トンデモナイ! 幼稚園くらいまでならまだしも、小学生になってからは、買ってやった本人一代限りで服としての寿命を全うするのがやっとのことだ。


そんな息子ばかりの我が家に比べて、女の子の子供服といえば……未就学児のころはお姫様のドレスみたいにフリフリだし、小学生になるとアイドルの衣装みたいにキラキラである。頑丈を信条とする息子たちの服とはビタ一文シンクロすることのない世界。

……でもって、そんな可愛らしい服を娘に着せたママさんたちは、揃いも揃ってなんだか得意げだ。


そんな様子を見るたびに私は


「ああ、ママさんたちは自分自身が叶えられなかったはかない夢を、我が娘に託しているんだなぁ……娘を自分の分身とみなして、見果てぬ夢の続きをいまだ醒めやらぬままに夢見ているのだ」


なんて具合に、生温かい目で&エセ微笑ましく眺めていたのだけれど、




……大変申し訳ありませんでした!!!! この私も同じ穴のムジナでした。


こないだ出かけたとき、予想してたよりもずっと寒かったので、薄着だった長男にスウェットシャツを買ってやったときのこと。

妻と長男本人は、ユニクロかGAPあたりで済まそうとしていたのに、
「おいおい、もう中学生になるんだぞ。全部そうしろとは言わないけれど、ひとつくらいはカッコイイ服を買ってやれよ」
と言って、某サーフブランドのいかにもハイティーンが着そうなシャツを選んでやったのは、この私だ。


なんてこった。私もまた息子を自分の分身に見立てて、見果てぬ夢を託しているではないか……!


来月いよいよ中学生になる長男に、使ってないiPod nano(第三世代)を譲ってやった。それから本人が「いらない」って何度も言ってんのに、「なんで? ホントにギター欲しくないの? 中学生になるお祝いにギター買ってくれってっどうして言わないの?」としつこく訊き返す私。ケータイも買ってやる…それから今年中には自分用のノートPC買ってやるぞ…そうそう、おまえ用のメールアドレスもつくってやらなきゃな……エトセトラエトセトラ。


息子よ……父の叶えられなかった夢、モテモテ男になってくれッ!(笑)